在镰仓,有一家帮人代笔的文具店,每代店主均由女性担任,只要有委托便会接受,即使是餐厅的菜单也会帮忙。
不知不觉间,雨宫鸠子成为了第11代传人,而与外祖母之间的误会,以及开始独自一人活在世上的恐惧,使她充满迷茫。给死去宠物的吊唁信、宣布离婚的公告信、拒绝借钱的回绝信、写给挚友的分手信……一封封代笔信是客人们的写实生活,也是一节节人生的课堂
编辑
山风·主播
小角
振ふり向むくと男爵だんしゃくが立たっている。素性すじょうはよく知しらないが、いつも着物姿きものすがたでこの界隈かいわいを歩あるいている偉丈夫いじょうぶの男性だんせいである。直接話ちょくせつはなしたことはないけれど、よく喫茶店きっさてんで新聞しんぶんを読よみながらコこーヒひーを飲のむ姿すがたを見みかける。頭あたまにはいつも、羽根飾はねかざりなどのついた粋いきな帽子ぼうしをかぶり、この辺あたりでは、男爵だんしゃくという名なで通かよっていた。
回头一看,男爵站在我身后。虽然我不了解他的身份,但这名身材魁梧的男子总是穿着和服在附近出没。我从来没和他说过话,却经常看到他在咖啡店喝咖啡看报纸,头上也一定戴着插了羽毛等装饰的潇洒帽子,这一带的人都称他为“男爵”。
「こいつに、返事へんじを書かいてほしいんだな」
男爵だんしゃくは、着物きもののたもとから手紙てがみを取とり出だすと、それをぞんざいにひらひら振ふりながら言いった。
「代書だいしょのご依頼いらいですか?」
念ねんの為確認ためかくにんすると、
“你帮我回信给这家伙。”
男爵从和服袖子里拿出信,粗鲁地在我的面前甩着信说道。
“请问您要委托代笔吗?”
为了怕自己误会,我向他确认。
「他ほかに何なんの用ようがあるんだよ」
威張いばり腐くさった態度たいどで一喝いっかつするので、とりあえず、男爵だんしゃくの手てからその手紙てがみを受うけ取とった。
自分じぶんのもらった手紙てがみに返事へんじを書かいてほしいという依頼いらいは、時々舞い込こむ。相手あいてが気きの置おけない友人ゆうじんであれば、しばらく放置ほうちしておいても構かまわないけれど、恩師おんしや目上めうえの人ひとから、しかも非常ひじょうに丁寧ていねいで立派りっぱな手紙てがみをちょうだいした場合ばあいは、返事へんじに窮きゅうするものである。筆不精ふでぶしょうなら、なおさらだ。時間じかんが経たつに連つれて返事へんじを待またせている罪悪感ざいあくかんが募つのり、結果けっかとして代だい書屋しょやに駆け込こむ人ひとも多おおい。
“不然找你干吗?”
他盛气凌人,用不悦的语气大声说着。总之,我先从他手上接过那封信再说。
有时会有人上门委托为他们写回信,假如对方是知心好友,即使暂时不回信也无妨。但如果收到恩师或长辈的信,而且对方的信写得很正式,文笔又很好时,往往不知道该怎么写回信;若是平时很少写信的人,更不知道该怎么落笔。时间越久,就对迟迟无法回信一事产生罪恶感,最后只好找人代笔。
けれど、男爵だんしゃくの場合ばあいはちょっと事情じじょうが違ちがうらしい。
「こんな輩やからに、金かねなど貸かしてたまるか!ただし、逆恨さかうらみされちゃかなわんからな。お前まえさんがうまく断ことわってくれ、成功報酬せいこうほうしゅうでどうだ?」
一方的いっぽうてきにまくしたてられた。男爵だんしゃくは言いいたいことだけ一気いっきに喋しゃべると、私わたしに手紙てがみを頂いただけたまま、さっさと行いってしまったのである。
但是,男爵的情况似乎不太一样。
“我死也不会借钱给这种货色!不过我也不想招惹他,你想办法帮我拒绝,事成后再付报酬,你觉得怎样?”
他自顾自滔滔不绝地说着。男爵一口气说完自己想说的话后,没把信带走便转身离开。
なんてせっかちな人なのだろう。代書依頼だいしょいらいのお客きゃくには、一応飲いちおうのみ物ものを出だすことになっているのに、男爵だんしゃくはツバキつばき文具店ぶんぐてんの中なかに入はいることさえなく立たち去さっていた。
这个人还真是性急。委托代笔的客人上门时,我都会请对方喝杯饮料,但男爵甚至没有踏进山茶文具店就离开了。
ちょうどよく日差ひざしが当あたっているので、虫干むしぼし中ちゅうのノのートとをそのままにし、ツバキつばき文具店ぶんぐてんの中なかに入はいってから男爵宛だんしゃくあての手紙てがみに目めを通とおした。確たしかに、借金しゃっきんを乞こう文言ぶんげんが綴つづられているけれど、誤字脱字ごじだつじが目立めだつし、回まわりくどい言いい方かたかつての恩おんを着きせようとしているのが見みえ見みえだ。
こんな輩やからに、金かねなど貸かしてたまるか!
そう言いい切きった男爵だんしゃくの言葉ことばに、納得なっとくせざるを得えなかった。私わたしも同おなじ手紙てがみをもらったら、お金かねを貸かして助たすけようと思おもわないだろう。
艳阳高照,我把笔记本留在门口,走进店里,看了写给男爵的那封信。内容的确是打算向他借钱,但信中有很多错字和漏字,而且还拐弯抹角地以恩人的态度自居。
(我死也不会借钱给这种货色!)
我不得不同意男爵斩钉截铁所说的这句话。如果我收到同样的信,也不会想借钱帮助对方。
気分転換きぶんてんかんがてら、夜よるは本覚寺ほんがくじの裏うらにあるふくやに行いって、山形やまがたの郷土料理きょうどりょうりを味あじわう。カウンタかうんたーだけの小ちいさな店みせで、いつ行いっても地元じもとの人ひとで賑にぎわっている。自分じぶんの恥はずかしい過去かこを知しる人ひとに会あわないかとハラハラはらはらするが、今いまのところ鉢合はちあわせしたことはない。
晚上,我去本觉寺后方的福屋吃山形县的乡土料理,以转换心情。那是一家只有吧台的小店,无论什么时候去,都挤满了本地的顾客。虽然有点提心吊胆,很怕会遇到了解我不堪往事的熟人,幸好到目前为止,从来没有遇到过。
奥おくの席せきに座すわって玉たまこんをつまみに冷酒れいしゅを飲み、〆しめに名物めいぶつの芋煮いもにカレかれー蕎麦そばを食たべている時ときだった。ふいに、出いだしの言葉ことばが浮うかんだ。そして、歩あるいて家いえに戻もどるまでには内容ないようもほぼ出来上できあがっていた。忘わすれないうちに、早はやく紙かみに書かき出だしてしまいたかった。
我坐在靠里头的座位喝着冰清酒,点了蒟蒻球当下酒菜,最后再吃那家餐厅有名的小芋咖喱荞麦面当收尾时,回信的第一句话突然浮现在脑海。在步行回到家之前,几乎已想好了所有内容,我很想赶快拿纸记录下来,以免不小心忘了。
家いえに着つくなりシャワしゃわーを浴あび、酔よいを覚さますために濃こく淹いれた緑茶りょくちゃを飲のんでから、さっそく仕事机しごとづくえに向むかう。謝絶状しゃぜつじょうの場合ばあいは書かく側がわの勢いきおいも大事だいじだ。何度なんども下書したがきをして思おもいを巡めぐらせる手紙てがみもあれば、こんなふうに一発いっぱつですっーと文面ぶんめんが決きまる手紙てがみもある。
一回到家,立刻冲澡,泡很浓的绿茶醒酒,随即坐在工作桌前。写谢绝信时,写信人的气势也很重要。有些信需要打草稿、多次修改,但有时候也会像这样一气呵成。
男爵だんしゃくの雰囲気ふんいきには毛筆もうひつよりも太ふとめの万年筆まんねんひつの方ほうが合あっていると判断はんだんし、今回こんかいはモンブランもんぶらんの万年筆まんねんひつを選えらんだ。インクいんくは、漆黒しっこく。紙かみは、つい先日押せんじつおし入いれから出土しゅつどしたばかりの「満寿屋ますや」の原稿用紙げんこうようしを使つかう。
下書したがきもせず、いきなり本番ほんばんの紙かみに書かき始はじめた。
根据我对男爵的印象,我觉得比起毛笔,粗尖钢笔更适合,于是这次选用了万宝龙的钢笔;墨色,使用漆黑色;信纸,则选用不久前才从壁橱中“出土”的“满寿屋”稿纸。
我没有打草稿,直接在稿纸上写了起来。
主播
?日语窗
声优日语
有声日语
?日本风景书签
日剧台词手机壳
?日语微店有赞书店
?0中介费日本留学
预览时标签不可点收录于话题#个上一篇下一篇